金沢中央走ろう会/ホノルルマラソン完走記録
市民ランナーが主役〜ホノルルマラソンを走る〜
金沢中央走ろう会代表 天野 耕兵衛
ゴール目指して (4/5ページ)
 15番目の介護所では水はもらわなかった。そこが峠でそれを下ればゴールが待っている。広々とした紺ぺきの太平洋が一望できる。思わずふっーと胸をひらいて大きく呼吸をした。
 道端には何人かの人が歩道に腰をかけて足を投げ出している。石垣に手をかけてけいれんをした足の筋肉を伸ばしている人もいる。疲労困ぱい一歩も走れないという苦しい表情で呼吸をはずませている人もいる。
 25マイル地点で「あと1マイル(1.6粁)」と教えてくれたときの時間が3時間33分だった。目標タイム3時間37分を切ることはもう無理。でも30分台でゴールインできないかと、下り坂で歩巾を広げてみたが、試走のときとは全然違う。筋肉が伸びなくなっている。坂を下りて公園に入る。ゴールまでの1km弱の直線コースの長いこと。両側の沿道から特設の柵越しに大きなかん声が聞える。誰れかが抜いて前へ出たが、追いかえすこともできない。うでを振っても足が前にあがらない。レース中、最も辛い、長い1粁であった。正面のデジタル時計が3:42:17と出たときにゴールラインを踏む。飛びあがって喜ぶほどでもない。ようやく終ったという感じが強かった。
 ゴールインをすると、係員が、ゼッケンの左側についている番号を打ちこんだ小片をとった。これをコンピューターに入れてタィム順位、年令別順位などのデーターをとるのだという。
 数歩先へ進むと、貝のレイをかけてくれた娘さんが喜びのキスをしてくれた。照れくさい感情は疲れのためか出てこない。
 すぐ霧のようなシャワーをかけて身体をひやしてくれる。
 コースから公園の芝生へ入ると、「コカコーラー」のカップをすばやく渡してくれる。一気に飲む。ほしければ何杯でもおかわりをくれる。
 とにかく走った。.多摩湖マラソン大会のときより12分も早いタイムで走れた。しかもほぼ目標タイムである。

閉会式付近の風景あれこれ
 何杯目かのコーラを飲んで柵の外へ出る。公園は人で一杯。あらかじめ決めていた集会所へいく。目じるしの県体協の旗が出ている。
植田さんのお母さんが「先生はすずしい顔をしているね」といわれたが、表情はそうでも腰を下したらすぐには立てない位である。完走賞の特製のTシャツをいただく、日本のようにメダルでないのがよい。
 5つばかり特大のテントが立っているが、そのひとつにビデオテープを見せてくれるのがある。ほぼ一時間前のゴールインの状況をうつし出している。テントの中央にはTVが6台準備されていて、どこからでも見られるようになっている。場内一ぱいの走り終ったランナーのあちこちから陽気なかん声が上る。これもよいアイデアである。
 隣りの野外音楽堂では閉会式までの3時間余りを音楽を聞いてもらおうとバンドの準備がはじまっている。
 他のテントのひとは、ランナーの長蛇の列がつくられている。何かと見ると指圧のサービスをしている。アイセン指圧マッサージ学校のサービスだという。指圧は大変な人気であった。
 続々とランナーが帰ってくる。ゴール付近は身動きができないほどで、拍手とかん声がたえない。
 芝生の上に大の字になってのびている人、いたい夫の足を懸命にさする奥さん、家族づれで食事をとる人、グループで輪をつくり声たかく語り合う人もいる。
 ある女の人は籠をもって、中にあるキャンデーを希望する人誰にでもただであげていた。そういえば、大会要項の9にピクニックとあり、次のように書かれている。
「当日の午後いっぱいは、お祭のような楽しい雰囲気でいっぱいになることでしょう。どうぞ、自分達のためと、遠いところから当大会に参加しにきた大切な友人のために、食べ物のたくさん詰ったピクニックバスケットを持って来て下さい。私達の有名な「アロハ精神」を見せてあげようではありませんか。市の規則により、市及び郡立公園並びに公道での飲酒は禁止されていますので御注意願います」と。
 明るく暖い天候、すきとおるような大空、カラフルな服装、のびのびとした人のうごき、完走した充実感や満足感、長い私の生涯にもこんな体験ははじめてである。やっぱり来てよかったとつくづく思った。

閉会式
 四時間前後で走り終えた野村さん親子、山本利枝さんらと完走を喜びあったあと、ホテルヘ帰りシャワーをとり、再び公園へ引き返す。午後一時から野外音楽堂で閉会式が始るところである。主催者代表が簡単な挨拶をしたあと表彰式に入る。男子一位のアンダーソンが大きな拍手に迎えられてステージの上ヘトロフィを授与されたあと、簡単な挨拶をしてまた拍手。次いで女性一位のカタラノが登壇する。前にもましてさかんな拍手。この高温の中で2時間33分台の記録は立派なものだ。

 ちなみにトップランナーの記録は
男子 1位 アンダーソン 2:16:54
2位 マクドナルド 2:17:34
3位 ステール 2:17:39
8位 須藤(日本) 2:24:08
13位 ショーター 2:25:07
女子 1位 カタラノ 2:33:35
2位 クラウグス 2:39:48
3位 ギルバート 2:46:37

 フランク・ショーターは現在運動具店の社長をして経済界に活躍をしているという。

『ジロー・マツシマ・ジャパン…』
 閉会式がはじまって間もなく、松島二郎さんが帰ってくる。「ジロー、マツシマ、ジャパン…」場内にとどろく大きなアナウンスである。いつものような小また走法で悠々とゴールイン。さきに帰っていた仲間がだきかかえるようにして迎える。7時間10分で完走したことになる。71才、ジョギング歴2年、ときには日に20粁も走ったことがあるという松島さんであるが、8時聞の予想タイムを大きく短縮した。終始変らぬペースで走り抜いたのはまことに立派。大きな拍手が沿道の観衆から起ったのも当然である。
 ちなみに私たちのグループでは

松島 二郎 (71) 7時間10分
清水 利吉 (71) 5時間05分
天野 耕兵衛 (60) 3時間42分17秒
表寺 松次 (54) 3時間29分15秒
野村 時代子 (47) 4時間55分30秒
植田 洋子 (39) 5時間04分27秒
山本 利枝 (34) 3時間46分10秒
野村 泰裕 (24) 3時間37分37秒
野村 潤子 (22) 4時間50分

 野村泰裕君は2時40分台で走ることを期待していたが体調が十分でなく、2回も吐いて大巾に遅れてしまった。山本利枝さんも3時間30分を目標としていたがコンディションがよくなく、やや期待外れで残念だった。
マラソンのぺース配分がいかにむつかしいものかということがよくわかった。


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機関誌『走快』1号掲載
ホノルルマラソン写真集

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