健康ランニング:情報ボックス
あなたもマラソンが走れます
金沢中央走ろう会 代表:天野 耕兵衛
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9.長時間走を中心としたプログラム
 ホノルルマラソンではいつも〔マラソンセミナー〕があります。そこでは長距離走の一流の学者が話をしてくれます。
 毎年、人が変わりましても基本的なことは大体同じです。「週に1回の長時間走をしなさい」ということです。2〜4時間走です。
 その人の目標、体力、能力に合わせてその組み合わせはいろいろありますが、基本は「長くやることが1回。やったら翌日は必ず量を落とす」ということです。
 これが一つのパターンです。これを3ヵ月続けるとかなりのタイムで走れます。3週間に1回、長時間走を入れても4時間くらいでは走れます。
 ただ限度がありますね。我々は一流の選手とは違って、生活がありますからね。
 私の場合はホノルルマラソンを目標にプログラムをつくります。
10.マラソンを走るためのトレーニングプラン
 各人の年齢、体力なかんずく持久力、走歴などで違うのであるが、健康ランニングのゆきつくところのマラソンを完走するという目標であれば、所要タイムの長短はあれ、距離としての42.195kmを走らねばならぬのである。
 42km…。金沢から南は加賀市、北は羽咋市までの距離である。考えただけでもぞうーとする。
 ストライドを100cmとすれば4万2千歩、片足だけで2万1千回。全身を支え、からだを前方にけり出さねばならぬ。もし70cmのストライドであれば約6万歩、片足3万回を、あのかたい舗装道路を踏みしめなければならぬことになる。
 そのためには、スピードよりスタミナ(持久力)を強化し、補強しなければならぬことになる。
 それには、マラソンを走るために少くとも3〜4か月間の特別プログラムを準備することが必要になる。
 3時間30分前後のランナーは2週間に1回は20〜30kmを走る。
 4時間前後のランナーは3週間に1回は20〜30kmを走る。
 5時間以上かけて完走しようというランナーは1か月に1回は20km前後を走って持久力を養っておくことが要求される。
 そして、その上に、大会の4週間〜3週間前に、35kmを走っておくというプランが必要になる。必ずしも42kmを走る必要はない。
 私の場合は、ホノルルマラソン(12月第2日曜日)を目標として、各地の大会に出場することでこれにあてている。
  9月 20kmレース 2回
 10月 20kmと30kmのレース各1回
 11月 20km1回と35kmの試走。
である。
 レースは決してスピードを上げないで、快調に余裕をもったレースで持久力をつけることを主眼とする。
 特に大切なのは4〜3週間前後の35kmトライアルである。
 前半は6〜7分のゆっくりしたぺ一スで1団となって走り、後半は、各人のぺ一スで走って帰る。コースは、金沢一美川間往復の35kmである。中には途中で歩く人も出ることもあるが、とにかく35kmを走り切る体力、精神力、そして距離感覚をつかませる。
 初めてマラソンに挑戦した人はこの35kmの体験が完走に大きな自信と力になっていると言う。
 よく、1か月の走行距離が300kmの人は3時間30分前後、250kmの人は4時間前後、200kmの人は5時間前後といわれるが、例えば300kmを走る人は、毎日1Okmを走って300kmにするより、週1回の休みを入れて、1週間〜2週間に1回〜2回、20kmを走った方が持久をつける上で効果的だということは当然である。
11.レースで留意すべきこと
 さて、各人にあった方法でトレーニングをして、いよいよレースになる。
 十分すぎる位にトレーニングをしてもレースに対する取り組みが間違うと完走できなくなることがある。たとえ完走しても極めて苦しい状態であったり、みじめなゴールインになったりしかねない。
 1OOmのレースならば一息に、ガムシャラに走り切ればよい。しかしマラソンはそうはいかない。
 明せきな判断力、鉄のような意志力、ねばり強い体力が必要になるからマラソンはむつかしいし、面白いのである。
 多くの人は、前半は極めて快調に走るが、後半はすっかりバテて、よれよれになって走っている。
 ホノルルマラソンでも、25kmのハワイカイあたりまでは歩いている人は少い、しかしだんだん歩く人は増えて、あと5kmあたりからダイモンドヘッドの峠あたりまで、かなりの人が歩いている。はじめの元気はどこへやらで消耗し切っている。このあたりで歩けば4時間を切ってゴールインすることはできない。中にはけいれんを起して、顔をゆがめて、ストレッチ体操をさかんにしている人もある、こんな人は自分のぺースを失って、前半とばしすぎてか、何回もぺースチェンジをして無理をしたからである。
 「前半をゆっくり走りなさい。30〜35kmに壁があるんだから、はやってはだめですよ」というのだが、ついついつられてオーバーぺースになってしまう。
 イーブンペースで走ることはなかなかむつかしい。前半押えて、後半どんどん快調にスピードをあげて、前ゆくランナーを追越していく。後半余程スピードがあがっているはずだがと思っていても、そんな感じの走り方でイーブンペースなのである。
 追い越したのは、スピードが上ったのでなく、前のランナーのスピードが落ちてきたのであることが多い。
 前半から息をはずますようなスピードでは後半はもたない。勿論、途中のぺースチェンジはなるべくしない方がよい。ぺースを上げると上げた部分のエネルギーの3乗に相当したものがロスとなってあとに大きくマイナスになるという。
 よく、スタート前にからだが重く感ずる方が結果的にはよい走りができるというのは、重く感ずるために前半をセーブし、後半に余力を残せる結果でないかと思う。
 マラソンは他人との闘いではない。自分との闘いである。冷静に自分の体調を判断して走らねばならない。呼吸の状態、汗のかき方、水の飲む量、膝や足の裏の感覚、腕の振りなど、的確に判断をして、後半は前をいく人をひとり、ふたりと着実に抜いていき、余裕をもってゴールインすることが、マラソンのコツであるし、それが健康マラソンで欠くことのできない大きい要素であると思う。
 5時間以上かかると思う人は、はじめから全部走り抜くことを考えないことである。また、走れる所まで走ってあとは歩いてゴールヘというのも考えものだ。
 25分走って5分歩く、あるいは20分走って10分歩くということでもよい。体力を消耗し切ってから歩くというのはよい方法ではない。歩くことを適当に入れることで疲れを回復し、体力を温存して走るのがよい方法である。
 全コース歩いて8時間かからなかった65才の男性がいるのだから、歩くことをとり入れても、7時間までにはゴールヘ帰ってこられる。
 走れるだけ走ってあと歩くという方法をとると、途中でへたりこんで動けなくなり、それで8時間以上かかることになるのだ。
 ホノルルマラソンでは、歩いても完走と認められ、完走者はすべて勝利者であるとされている。
 ホノルルでは下痢や発熱などで体調をこわさず、自分の体力をよく知った走り方をすればきっと、すべての人が勝利者になれる。
12.何故、ホノルルマラソンか
@ホノルルは冬でも暖かい気温(20℃〜25℃)であるが、トップランナーは、日の出をすぎる頃にもうゴールインしてしまう。
 他の者は、だんだん高まる気温の中で走ることになるが、歩いていても、一服して腰を下して休憩していても風邪をひく心配はない。また寒さによる体温低下、そしてふくらはぎなどのけいれんということもない。
A給水所が3kmに1か所の割に設置されているから、暑くて発汗が多くても水分の補給は十分に
できる。水さえこまめにとっておくと、脱水症状を起す心配は先ずない。水だけでなく、コーラのガスをぬいたもの、そして、スポンジを冷水にひたしたものが用意されていて、ボランティアの人たちが、それらを差出してくれる。
Bランナーが多い、1万人を越えるエントリーがある。
 タイムの制限がないので、世界のトップランナーもいれば、初めてマラソンを走る人もいる。7才〜80才までの人がいるのだから、どの位置にいても前後に仲間のランナーがいる。マラソンは孤独なレースといった人がいるが、前にも後にも人影がないということはホノルルマラソンでは先ずない。だから引いたり、押したりされながらゴールヘと進むことになる。
C沿道の人の声援がすごい。
 早朝より庭先きにテーブルを持ち出して声をかけてくれる人、ホースをもって水をかけてくれる人、25kmあたりではワセリンをくれる人もある。そのあたりになるとわきずれが出来ることを知っているのであろう。時には金沢という胸のマークを見つけてか、「兼六園ガンバレ」という声援をうけたこともある。
 給水所では50人を越すボランティアの人たちが「素晴らしい」とか「かっこよい」とかワイワイはしゃいで励ましてくれる。
 ゴール間近かには、8時間をすぎてもかなりの人たちが一斉に拍手をして勇気づけてくれる。勿論役員は最後のランナーまで暖かくむかえてくれる。
 ホノルルマラソンは初心者や初めてマラソンに挑戦する人が多いのであるが、完走率もまた高いのはこのようなよい条件の中で走れるからであろう。
 初めて完走した人は、感激して涙を流す。シャワーをあびながら涙が止まない。
 涙の出るような感激は一生にそう何回もあるものではない。
 辛かったトレーニング、そして42.195kmの長いこと、それを走り抜いた喜び、ついにやったと両手を上げたくなる。こんな大きい満足感、充実感、晴がましさ、これはマラソンを走り抜いた人のみが味うことのできる喜びであり、感激である。
 自分の人生の大きな力、いや宝を得た感じがする。やれば出来るという自信は何ものにもかえがたい財産である。
 あなたも、この喜びを味うことができるのです。
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機関誌『走快』8号掲載

編集長メモ
距離走について
 私は58歳からマラソンに挑戦しました。最初はホノルルマラソン2003。目標タイムは5時間です。目標タイムに応じた距離走の資料は、いろいろ紹介されていますが、私は次の図を利用しました。走歴や年代により幅があります。自分の走力がどの辺にあるかを把握すると、目標に応じた距離設定ができます。
 60歳からサブフォーを目指します。月間150kmでのタイム幅は4時間から3時間10分、私は一番遅い位置です。4時間の距離走は月間150kmと設定して練習計画を消化していきます。

編集長のマラソン講座健康ランニング:情報ボックス

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